ニューヨークは言わずと知れた音楽家やアーティストのよりどころ。全国、全世界から様々な文化が集まり、吸収され、さらに新しいものが創造される、インスピレーションの宝庫だともいえます。様々な歴史的過程を経て音楽も成長し、「ニューヨークといえばジャズ。」漠然とそんなイメージが定着するほど。時代のあおりを受けて変動しながらも、今でもジャズが聞ける場所は少なくありません。
さて今回取り上げるのは、ジャズの演奏とジャズを長年支えてきた教会についてです。
マンハッタンにあるSaint Peter's Churchでは、日曜の夕方に「Jazz Vespers」(ジャズ・べスパーズ)という夕べの祈りが設けられ、毎週ミュージシャン達が演奏と祈りを捧げています。教会のメンバー以外の人にも公開されているJazz
Vespersは、誰でも音楽に触れる事ができる他、年齢やスタイルなど様々なミュージシャンが招かれ、独自の演奏を披露しています。5月28日のJazz
Vespersでは、ショーン・ウェイランド・カルテットによる演奏と、故スティーブ・マーカス(ジャズドラムの巨匠バディー・リッチと長年共演したサックスプレーヤー)のメモリアルコンサートが行われていました。夜の街に似つかわしいジャズの調べは、ひときわ違う雰囲気の中に溶け込み、重厚な響きとなって私たちに胸に届けられました。
その始まりは40年前にさかのぼります。ジャズミュージシャン達と個人的に親好のあった故ジョン・ガルシア・ゲンゼル牧師が彼等と接し、悩みを聞くうちに、Jazz
Vespersが取り入れられるようになったといいます。(特にデューク・エリントンは、ゲンゼル牧師との素晴らしい友情を“The Shepherd
Who Watches Over the Night Flock”という曲で表しているほど。)当初、ジャズは「悪魔の音楽」との扱いで、なかなか教会で受け入れられなかったそうですが、ゲンゼル牧師の協力によって定着し、現在もなお続けられています。さらにSaint
Peter's Churchでは、デューク・エリントン、ジョン・コルトレーン、ディジー・ガレスピー 、セロニアス・モンクなど、ジャズ史に大きく功績したミュージシャンのメモリアルや、「All
Night Soul Jazz Festival」という毎年恒例のフェスティバルが開催され、去年はこの中で、ニューオーリンズのカトリーナ被災者に捧げるトリビュートコンサートとしてニコラス・ペイトン、ジョン・パティトゥッチ、ジョン・エリスらも出演したそうです。
音楽が盛んだとされるニューヨークでは、これまでも新たな音が生まれ、偉大な音楽家が輩出されました。その中で長年彼等に演奏の機会を提供し、支えとなっているSaint
Peter's Churchは、ジャズとともに歩み、切り離せない存在であるといえるでしょう。

【SAINT PETER'S CHURCH】
http://saintpeters.org/
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