舞台中央には棺桶。それを取り囲んでいるのは、盲目の姉と弟、そしてその親戚や関係者達。悲しげに雨が降りしきる中、当事者達は、お焼香の順番についてあれやこれや話している…こうして重々しい空気に包まれて始まったのは、日本の不条理演劇の第一人者、別所実氏の代表作品「赤い鳥の居る風景」(岸田國士戯曲賞受賞)です。
突然自殺を遂げた両親の葬儀がひっそりと行われていると、謎の死を追究するべく「委員会」の男、両親に大金を貸していたという「旅人」が現れます。一風変わった登場人物はさらに、社会に対応できずに自暴自棄となりついに殺人を犯してしまう「弟」、そして自由奔放に生きる「若い女」、「弟」の刑を軽くしようとする善良な街の「市民」と続き、個々の出来事が何かを象徴しているかの様にストーリは展開していきます。
10月13日から3日間、American Theatre of Actorsにて、この「赤い鳥の居る風景」を公演するのは、過去2回のニューヨーク公演で成功を収めた木山事務所です。1999年には広島の原爆体験で有名な「はだしのゲン」(ミュージカル)を、1997年には「仮名手本ハムレット」を上演しました。今回は東京、ソウル、ニューヨークでの3ヶ所での公演です。
日本語で演じられているので、私にとっては内容を理解するのに問題ないはずなのですが、意味が幾重にも受け取れるため、登場人物の劇中の役割や台詞の内容を把握するのに終始舞台から目が離せません。微妙な役どころを上手にこなす役者の演技にも引き寄せられていきます。
会場では、英語の同時通訳が聞けるヘッドフォンも用意されていました。観客のアメリカ人も「国際社会の中の日本の立場を風刺しているのではないかと思った」とか、「劇を見ながら、集団内の和を重んじようとする日本人の行動様式が窺えた」など、それぞれに受け止め、楽しんでいた様です。
劇の内容については観客一人一人に委ねられているといえど、日本以外での公演を推進するのは、作者別役氏と長年親好のある演出家、木山潔氏が、当作品の中に「豊かな社会で見失いがちな平和への責任や誠実な生き方に対するメッセージが含まれている」と解釈する由縁でしょう。
海外公演に携わるたくさんのスタッフの努力は計り知りませんが、この様に日本の演劇が海外で上演されることで、さらに多くの人に日本文化の理解が深まり、友好と平和への足がかりになるのではないでしょうか。

【IPS Productions】
http://ipsnewyork.com/
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