新神戸オリエンタル劇場
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2006.9.1

ジャズの世界に巨人、偉人と呼ばれる存在は数多いけれど、このハンク・ジョーンズほど“親しみやすい”巨匠はいない。ジャズにそれほど詳しくないという方でも、かつて日本の某テレビCMでピアノを弾きながら「ヤルモンダ!」とセリフをキメていた黒人のお爺さん、と言えば思い出す人も多いだろう。ジャズの基礎知識をひと通りご存じの方なら、マイルス・デイビスが参加し、スタンダードの大定番「枯葉(Autumun Leaves)」の決定的名演が収められたキャノンボール・アダレイの傑作『サムシン・エルス』(58年)でピアノを弾いていた人、もう一歩詳しければ、サド・ジョーンズ(tp)と故エルヴィン・ジョーンズ(ds)の実兄であり、暗記しているスタンダード曲が1,000を下らないとされる通称“ミスター・スタンダード”など…。また、歴史を振り返るニュース映像などで一度はご覧になったことがあるであろう、故ケネディ大統領の誕生パーティーでマリリン・モンローが歌った「ハッピー・バースデイ」のピアノ伴奏を務めたのも、このハンク・ジョーンズその人である。しかも、1918年7月31日生まれ、御年88歳にして今もバリバリの現役! これまたグレイト、と言う他ない。
  
そして、そのハンク翁が率いるザ・グレイト・ジャズ・トリオ(以下GJT)は、これまたジャズの世界に無数に存在するピアノ・トリオのなかでも最高峰のひとつに数えられる名門中の名門である。始まりは、70年代の後半。ロン・カーター(b)とトニー・ウィリアムス(ds)という、60年代のマイルス・デイビス5重奏団を担った最高のリズム隊とともに結成されたGJTは、フュージョン/クロスオーバーが完全に主流となっていた時代にジャズ本来の魅力を鮮やかに復権させ、シーンの流れにも大きな影響を与えた。ちなみに当時のハンク・ジョーンズは、60歳を迎えようかという頃。シーンの最前線からは忘れられた存在となっていたが、このGJTによって30年前にもひと世代下のスター・プレイヤー互角に渡り合い、世界中のジャズ・ファンを「ヤルモンダ!」と唸らせたのである。
  
老齢の音楽家、といえば最近では“ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ”や沖縄の“白百合クラブ”などが大きな注目を集めたが、ハンク・ジョーンズはずっと現役であるがために良くも悪くも特別視されることはないけれど、よりリスペクトされるべき存在、かもしれない。しかも、今回のGJTのメンバーに翁が迎えているのは、チック・コリアのバンドで広く知られるジョン・パティトゥッチ(b)に、ジャズ〜フュージョン系にとどまらずスティングやマライア・キャリーなどのバックも務めてきたオマー・ハキム(ds)と、いずれも80年代以降に頭角を現してきたほぼ40歳年下(!)のリズム隊。もちろん正調ジャズもこなす実力派だが、現代的で切れ味の鋭いパワー・プレイも得意とする両者を迎えて、日本で言うならば“米寿”を迎えた御大はどう出るのか? スタンダードを中心としつつも予定調和には陥らない、スリリングな一夜となるのは間違いない。)
 
  
text / Hidesumi Yoshimoto

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