新神戸オリエンタル劇場
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2007.1.24〜1.25

◆上演作のあらすじ
 戦災と地震、二つの地獄を生き延びた男の話。
 阪神・淡路大震災が起こり、必死になって逃げ惑う中に突然甦った戦争の恐怖。一面の火の海を駆け抜ける視覚に、幼い頃体験した戦争の光景がシンクロする。両親に手を取られて必死に逃げ廻ったあの記憶だ。
 戦後の焼け野原を復興に向けて精一杯生きた父と母の姿。一人息子を残しこの世を去った父。夫に先立たれ苦労を重ねながらも、ありったけの愛情を注いでくれた母との暮らし。
 震災の恐怖と戦争の恐怖が入り交じり、一人の男の記憶が蘇り、さらにその奔流は勢いを増す。
 戦争の恐怖、父を亡くし母との二人暮らし、突然襲った大地震、そして病。
 人生後半、自己の病との格闘をも、なぜか可笑しく笑える一人語り。
 そこはかとなく面白可笑しく、そして哀しい庶民の悲喜こもごも。
 
◆震災の傷痕
[再燃現象(フラッシュバック)]
肉体的・精神的なストレス状況下において起こる記憶の再体験や幻覚、パニックなどの症状。
 
 たった一人の出演者、須永克彦が演じる男は、大震災から逃げ延びる中で戦中戦後の記憶をフラッシュバックさせた。それは恐怖に満ちた戦争体験だけではなく、遠い昔にこの世を去った父との邂逅、母との思い出でもあったのだ。
 阪神・淡路大震災から11年が経った。戦後自然災害史上最大の被害をもたらしたとされるこの大震災は、今もなお多くの人の心に深い傷を残し、時にそれを掻き毟る。取り戻したと思われた日常の中で、不意に震災の記憶が蘇る恐怖と戦う人がいるのだ。
 しかし、須永克彦が演じる男は、生きることの苦しみも楽しみも、まるで全てを知っているかのように達観している。だからこそ、恐怖や悲しみさえもどこか可笑しく語ることができるのだ。
 一人のちっぽけな男の中に残された大きな傷痕。それを乗り越える大きな男。誰もが心に持った傷を乗り越えて生きていくのだろう。
 
◆それぞれの舞台
 庶民の生活をベースに、心あたたかく市井の人々を舞台に描き続ける劇作家渡辺鶴、演出家須永克彦。その原点を垣間見る一人芝居。
 中国で『満台(一人で舞台を満たすことができる)』と絶賛された一人芝居の大御所が魅せる一人芝居は、その限られた舞台の上に、何人もの役者といくつものストーリーが、まるで記憶のように現れては消えていく。
 道化座の描く『庶民』を観ればよく分かる。どんな庶民の人生も、それは壮大な『命』のドラマなのだ。言い換えれば、この世界に『庶民』などいないのかもしれない。誰もが『自分』という人生の一人舞台に立つ主人公なのだから。
 
text / Yugo Makimoto

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