
夫に先立たれ、一人息子の零と仲睦まじく暮らす圭子。ある日突然、2人を悲劇が襲う。大学に入学したばかりの零が飲酒運転の車にはねられ、命を奪われたのだ。
愛する息子の突然すぎる死。圭子は零の死を受け止められないまま悲しみの日々を過ごす。加害者の男は飲酒運転かつ無免許、再犯だったにも関わらずたった3年の刑期という判決。
交通犯罪のあまりにも軽い刑罰に疑問を感じた圭子は、刑法改正に向けて立ち上がる。自分と同じ悲しみを背負う人を一人でも増やさないために。そして、圭子は「零くんの分も生きるんだ」と誓い、世の中にひとつひとつ奇跡を起こしていく…。
『0(ゼロ)からの風』は、今年57歳で早稲田大学を卒業された、ある母親の実話にもとづいて描かれた映画である。
「未来ある若者の命を一瞬にして奪い去ったというのに……。
殺人に等しいほどの重罪なのに、何故『業務上過失』なのか?
何故たった3年の刑期なのか? たったの3年・・・」
悪質ドライバーによって最愛の息子を失った母親は、同じ思いを抱く仲間たちと共に加害者の厳罰化を要求する署名活動を2年に渡って展開。結果、翌年に国会審議を経て、一般市民による初めての法改正となる「危険運転致死傷罪」の新設を成し遂げた。
しかし、それだけでは終わらない。彼女は「息子の人生を代わりに生きよう」と決意。息子が入学した早稲田大学を受験、見事入学を果たしたのである。さらに、彼女自ら「生命(いのち)のメッセージ展」を企画。悪質な事故や事件によって亡くなった人たちの等身大パネルや生きた証である靴、家族からのメッセージを展示し、「生命の重み」を伝えていこうという移動式の展示会だ。
企画・監督は、塩屋俊さん。主人公の母親役を田中好子さん、息子を杉浦太陽さんが演じている。塩屋監督は数年前、この映画のモデルとなった鈴木共子さんをニュースで知り、「この人の挑戦を映画化しなくてはならない」という衝動に突き動かされたという。企画当初より、製作費用は寄付・協賛金のみで行うと決め、自主上映から徐々に各自治体の協力を得て、全国へと上映の輪を広めていった。ここに至るまでの苦労は並大抵ではなかったが、共子さんが経験した艱難辛苦に比べれば、と幾度も気持ちを奮い立たせてきた。2年間の自主上映は、鈴木さんが代表を務める「生命(いのち)のメッセージ展」の活動ともリンクして行い、上映の収益をメッセージ展の活動資金として寄付し、映画のエンドロールにはメッセージ展のメッセンジャー121名の名前も記しているという。
「零くんをはじめとする121名の生命のメッセンジャーたちがこの映画を支えていてくれる」
と語る塩屋監督。今後もより多くの人々にこの映画を観てもらうことで、悲惨な事故に対する認識を深め、刑法だけでは変えられない部分も変えていくことを願っている。 |