新神戸オリエンタル劇場
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股間の天狗面で次々と女性を昇天させる犬吉。だが面の奥の「彼自身」は、一番大切な女性を前にその力を発揮できないまま。果たして彼が自力で立ち上がれる時は来るのか…。
草木も眠る丑三つ時、今宵もお江戸のいずこかに、ほてる身体をもてあまし、眠れる夜に悶々と、うずくその身のお相手を、いたしますのは深紅の…
 
天狗面!
 
だつよし氏率いる劇団、TEAM発砲・B・ZINの最新作『テングメン』は、江戸の街を舞台に、股間につけた天狗の面で夜な夜な女性たちを昇天させるという裏稼業の男を主役にした、ちょっぴりエッチでやがてしんみりさせてくれるエンターティンメント作品。

稼業の凄腕女泣かせと気弱な町人、ばりばりの仕事人間と自分に自信を持てない家庭人、手練れのプロ娼婦と純愛を求める清純な町娘…。登場人物たちには皆二面性があり、その表面上の顔を取り繕おうとするあまり、裏の、しかし本当はそちらの方が“表”である側の自分の顔に自信を持てないでいる。精神的にEDな人たち、といえるだろうか。そんな彼らの間で生まれる気持ちのすれ違いが話をややこしくしていくのだが、何のことはない、自分にとって恥ずかしい方の顔を思い切って晒してしまえば、「なぁんだ、みんな同じだったんだ」と解り合える。 そこにしみじみとした“味”が生まれる。

ちろんそこは“発砲”。小難しい理屈を述べ立てるのでなく、スピーディーな展開とコミカルなアクションのたたみかけで、こちらを飽きさせることなく一気に二時間のお芝居が進行する。あれこれ考えるのは見終わってから。まずは彼らが次々と仕掛けてくる、明るく楽しく、なおかつ少々不健全なネタの数々を素直に楽しめばいい。

ングメン=犬吉(森貞文則)と彼を追う岡っ引きの猿蔵(西ノ園達大)、犬と猿ながら実は根っこに抱えている悩みは共通、というこのふたり。犬はやや弱気に、猿はぶっきらぼうに演じ分けて好対照。凛とした、みえ(井上晴美)、キュートなうさぎ(小林愛)の二人のヒロインも魅力的。脇を固める根津と、とらの薬屋夫婦(田口治、武藤晃子)、謎のたぬきそば屋(大橋夢能)らの、テンションの高い怪演も見逃せない。最小限の小道具を用いて、シンプルに“見立て”の粋さを表現した舞台装置も印象的。最後に控える大立ち回りは、さすがに“ほんのり18禁”を謳うだけのことはある、いかがわしくも爆笑を誘う見せ場になっている。

々下品なおかしさに満ちた『テングメン』、単純に笑って見終わることもできるけれども、意外に見る側が、「アアソウイエバ、タシカニコンナコトッテアッタナア」などと思えるところがあるかもしれない。それはたぶん私たちもまた、犬吉や猿蔵、みえが抱えたと同じ悩みを一度は持ったことがあるからだろう。うわべばかりを気にして生きる私たちに向けられた、“カッコつけずにありのままを出すのが本当の愛情だよ”というきだ氏からのメッセージがちょっぴり心にしみる。
text / Osamu Kato

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