鉄之助の誘いに乗って何の気なしに見物に出かけた旅芸人の一座で、啓一郎(岡田達也)にとって驚くような出会いが待っていた。一座の花形である女剣戟の名手、千鶴(温井摩耶)。彼女は一年前に他界した啓一郎の姉と瓜二つだったのだ……。

こんな風に幕を開けた、演劇集団キャラメルボックスの新作「まつさをな」は、啓一郎とその両親に乞われて青柳家の養女として武家の娘となった千鶴が、なれない武家のしきたりにとまどい、さまざまな騒動を巻き起こしながらも、持ち前の明るさ、素直さを武器に、自らの本当の居場所を獲得するまでの物語。タイトル通りに真っ青な、みずみずしい空と海を背景に描かれる、青春群像劇だ。

徳右衛門を演じる客演の粟根まこと(劇団☆新感線)の、キャラメルボックス的なお芝居とはやや傾向の違うコミカルな演技が、随所で良いアクセントを生み出している。彼を家長にいただく青柳家は藩の重臣の家柄なのだが、妻の満寿江(坂口理恵)、侍女りく(岡内美喜子)、そして供侍の忠兵衛(左東広之)まで、実にナチュラルで気負ったところがなく、振り回されつつも案外素直に千鶴の存在を受け入れていく。
そんな中、ただ一人啓一郎のみが、その堅物な不器用さ故になかなか素直になることができないでいる。

かけがえのない、そして一度失ってしまったと思われた娘、姉、(ある人物にとっては)想い人に瓜二つの存在が突然現れたことで起きるユーモアとペーソスの連続は時に楽しく、時に少し切ない。立場の違いが生み出す考え方の違い、身分の違いが生み出す憎しみとあこがれ、信じること、愛すること、人それぞれに異なる感情の起伏が織りなす物語は、最初はとまどいや疑いがあったとしても、信じ続ける気持ちの強さが、最後にはあらゆる障害をはねのけてしまう力があるのだ、という明るい希望を私たちに告げて幕を閉じる。ステージの照明が消えた後も、私たちの瞳の奥には明るい希望の色が残っている。その色もまた、あざやかに「まつさをな」ものであるのだろう。 |