新神戸オリエンタル劇場
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かさむ赤字、持ち前のクサい芝居も飽きられて、劇団トゥモローの前途は真っ暗闇。新規公演のめども立たずに落ち込む彼らの前に現れた、笹倉と名乗る弁護士は、彼らに破格の提案を持ちかける。期間は5日、報酬は1000万。すっかり心を閉ざしてしまった老人、大道寺氏に人間らしい心を取り戻してもらうため、一世一代のクサい芝居を演じて欲しいというその依頼に、加地以下の劇団メンバーは、飛び切りのホームドラマで応えようと策を練る…。
団赤鬼の新作、「Fake Heart」は、心を閉ざした一人の老人と、彼の心を解きほぐそうと、彼の知らぬところで生まれていた息子とその家族、という設定を演じる劇団メンバーたちが巻き起こす、笑いあり、ホロリとさせられるシーンありのシチュエーション・コメディ。老人の心を解きほぐすために用意された仮の家族のキャラクター設定と、それを演じる役者たちの実像のずれ、芝居が行われていることを知らない大道寺と、彼の屋敷の使用人たちとの認識のずれが、笑いと涙のシチュエーションの元になる。

サい芝居が身上の劇団トゥモロー。長男を演じる山下は、一つ前の公演で初めて主役に抜擢された新人で、演技はクサく機転が利かない。妻役のりえと長男役のシゲさんは、実生活では恋人同士で、特にシゲさんは、りえが他の男性と必要以上に仲良くしているところを見るのが我慢できない。そして次男を演じるのは、子役を演じたら天下一品と言われる女優、蓮森。舞台の上では元気いっぱいの男の子に見えても、リアルな現実は婚期を逃しつつある一人の女。ふつうに考えれば無理のある設定ということになるのだが、請けたからには最高の芝居を作らなければならない……。

台の上でだけ通用していたはずの設定が、そのまま実生活に持ち込まれたことで起きる騒動の連続に観客は笑い、大道寺老人が心を閉ざすことになった、ある事件に深く関わると思われる、ビートルズの「Let It Be」のビニール盤にまつわるエピソードにほろりとさせられ、そして、そもそもなぜ、こんな芝居が必要になったのかがわかってくる、後半からクライマックスへかけての展開からは、深い感動を受け取ることになる。

編を通じて流れる当時のサウンド、大道寺老人の過去に深く関わる学生運動のエピソードなど、若い人だけに楽しんでもらうにはもったいないフィーチャーあり、メイドさん大挙登場の“萌え”属性への対応も抜かりはなく、テンポ良く笑わせてもらいながら、最後には暖かな感動が待っている。どんなにクサかろうが、芝居のラストは愛のあるハッピーエンドでなければならないんだ、というトゥモロー座長、加地のポリシーは、そのまま劇団赤鬼のポリシーでもあるということなのだろう。そしてそれは、愛することは決してクサいことなんかじゃないんだよ、という私たちに向けたメッセージでもあるのだと思えてくる。
text /Osamu Kato

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